303 SURFBOARDS
Feature 004
Feature 004  |  TIME MACHINE INTERVIEW 1982  |  
Interview article 36 years ago.

1982年、千葉公平、30歳


千葉公平。関西から現れた最初の本格派だった。無類の旅好き。それが彼のクラシックなサーフィ ングを支えてきた。OSAを2度連続して制覇してももそれに固執することは、決してなかった。そ して今、自分自身の可能性をサーフボードシェイピングの中に見い出そうとしている。まったく新 しいステージに立ち、歩き始めた彼は、それでも旅を忘れない。それがクラシックなトータルサー フィンライフの支えになることを充分に心得ているから。

“それで俺は、
ゆくゆくは自分のハンドメイドの板を
作ってあげられるようにと、
シェイプを始めたんだ”

1

大野 まず今、一番興味のあるものはなに?
千葉 シェイプに今はすごく興味があるね。
大野 シェイプはいつ頃から始めようと思ったの?
千葉 シェイプはね、昔、5年くらい前に始めようと思ったんだけど、そのころはやっぱり一生懸命に波乗りをやってたし、そんなチャンスもなかったね。
大野 それはどこにいる頃?
千葉 茅ヶ崎にいる頃。
大野 その前は全然考えてなかったの?
千葉 そういう訳じゃないんだけど、昔からハワイとかいろんな所で、いろんな人からシェイプしてもらってたから、大変な職業だなあと思ってたけど、シェイプにはあこがれてたね。
大野 昔からシェイプというのは器用な人がやるっていうのがあったけど、どう? 器用だった?
千葉 あまり器用じゃなかったね。
大野 シェイパーにインタビューするときは必ず聞くんだけど、必ず器用じゃないって言うんだよね。それでも、けっこういい板を削ってるんだよね。
千葉 そうだね。器用とか不器用とかはあんまり関係ないみたい。
大野 うん。それでそのいろんな人の板に乗ってたって、例えばどんな人。
千葉 有名な人だったらランディ・ラリックとかディック・ブリューワーとかスティーブ・イン。
大野 現在でも自分のシェイプじゃない違う人の板も削ってるんでしょ。
千葉 うん。ゲーリー・リンデンとかピーター・マッケイブ。それは自分のシェイプにどういうボードかなと試そうと思ったり、自分のシェイプにも使えるんじゃないかなあと、いい点を探し出してるという感じ。
大野 最初にシェイプを教わり始めたのはいつごろから?
千葉 去年の5月頃かな。
大野 だれが教えてくれたの?
千葉 特にだれも教えてくれないね、独学。
大野 うん。でも波乗りはもう何年やってるの?
千葉 波乗りは11年くらいかな。
大野 それだけやってれば、サーフボードの削り方なんかいろんな所で見たりするものね。
千葉 そう。そういうのはすごく見てきたね。さっき言った人なんかをね。
大野 それで、自分で削り始めて、納得のいく板ができるようになるにはずい分時間がかかった?
千葉 今はまだ納得のできる板とかいうんやなくて、プレーナーを自由に扱えるように練習してる。それができたらいろいろと想像して削れるようになると思うから、そういうふうに努力してるね。だから最初から商品としてできるシェイパーじゃないことは確かだね。何でもいいから出したいという気持ちでやったんじゃない。


 

2
大野 シェイプを始めてから一番大変だった事ってなに?
千葉 サーフィンをする時間が少なくなったね。あと、少し神経質になったかな。やっぱりつまる時があるよ。1週間ぐらい全然手をつけないとかね。
大野 けっこう、あせっちゃって、やりたくなくなるってこともある?
千葉 あるねえ。
大野 でも自分の性格からしてあの密室で集中して物事を創り出すってことはあってるとおもう?
千葉 向いてると思うね。
大野 まだ僕、公平がシェイプしてるところを見たことがないんだよね。
千葉 今度見せるよ(笑)。
大野 僕はね、ずっと前から公平を見てて、シェイプをするようなタイプじゃないと思ってたの。善家さんだとか青田だとか、シェイプで生きてる人もいるけど、波乗りだけで行きてくタイプの人も出てるじゃない。例えば僕なんかもシェイプはできないし、公平もどちらかといえばシェイプをするタイプじゃないと思ってたんだけど。
千葉 そうだね、タイプじゃないかもしれないね。でも住んでるところがどちらかといえば大阪。で、結局サーフィンの業界の雑誌とかサイクルは東京に向かってるよね。その点では関西は多少損をするよね。明るいところへ出れないやつもいるし。ハンディはあると思うね。それで俺はゆくゆくは自分のハンドメイドの板を作ってあげられるようにとね。それでシェイプを始めたんだ。
大野 それでどんな板を創りたいの?
千葉 人よりシェイプしたのが短いからあまり言えないけど、スピードの出る板をつくろうとしているね。そしてていねいに時間をかけてね。
大野 公平は大阪を中心としてハワイに行ったりしてたね。こっち(湘南)にはどのくらいいたの?
千葉 3年ぐらい。
大野 それから大阪へ帰って、OSAの1回、2回、5回と勝ったじゃない。それから若いサーファーが出てきたんだけど、なにか期待はずれだったわけ。で、1年くらい姿をみせなかったじゃない。その間にシェイプをやり始めて他の?
千葉 うん。シェイプしたり、もちろんハワイへも毎年行ってた。それにその間にも、まわりの関西のサーファーの事はよく見てたけどね。
大野 その間に、大きいブランクの間にね、若いサーファーが出てきて、あせりみたいなものは感じなかった?
千葉 そういうほどあせりは感じなかったけどね。
大野 若いサーファーが出てきて、地図が変わるなかで1年間コンテストに出てこなかったのは、自分でもあせりを感じてるんじゃないかなって思ってたわけ。でもそれが、あの長嶋じゃないけど、充電されて戻ってきたわけでしょ。それで今年はあと5戦ぐらいで終るんだけど、今年は何回出たの?
千葉 3回か4回。丸井には出てる。
大野 伊勢(丸井第3戦)はどうだったの?
千葉 伊勢は9着!
大野 コンテストはこれからも出るつもりでいるの?
千葉 うん。出たいなあと思うコンテストには出るつもりでいるよ。そのためにスポンサーもあるし、出られるだけでたいね。
大野 でプロサーファーとしてシェイパーとしてそれなりの生活はできてる?
千葉 そうだね。結局コンテストに出たら30本シェイプするところが15本になったり、そういうこともあるね。
大野 いくつくらいまでコンテストに出るつもり?
千葉 あと2、3年かな。
大野 この間のラハイナの大会で見てると、こうビシッとくるのは、公平とか福田くらいなんだよね。そういう関西の重心という感じで見まわしてみて、育っている若い選手っている?
千葉 そうだね。ただコンテストには弱いやつは多いね、関西は。コンテスト以外で木梨とかはうまくなってるね。あと福田に関してはいろんな波をまだ経験してないって感じだね。
大野 旅が少ない?
千葉 そう。いろんな波に乗らないとね。だからこの間のコンテストみたいに乗ってもスピンアウトしておわってしまうとか。いろんな波を経験しないとね。あとスポンサーにしても選手をうまくバックアップしてあげたら、そのメーカーなり会社は残っていくんじゃないかな。
大野 ビジネスの面で現在、大阪っていうのはどうなの?
千葉 大阪のシェイパーなりサーファーを見てて、こっち(湘南)の人と比べて、みんな外へ出てないね。みんな、いろんな人のいいところをみて吸収して大きくなってるのに。それにくらべて関西はそういう面が少ないね。他のシェイパーとコンタクトをとってだんだんうまくなっていくというね。だからなかなかいいボードが出てこないんじゃないかな。今、関西の場合もまだスタートしたばっかりという気がするね。だから徐々にいい板もできてきたら、いいサーファーも出てくるだろうし。


“ラインがきれいでスムーズで、
チューブに入るサーフィンがいいな”

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大野 小さい頃からやってたのは少林寺拳法?
千葉 そう。やってたよ。15ぐらいから少林寺拳法をやりだして、18ぐらいから日拳(日本拳法)をやり出して、22ぐらいまでやったかな。
大野 それはどういうキッカケで始めたの?
千葉 小さい頃からバスケットボールとか団体スポーツをやってたの。でもそういうのがおもしろくなくなってきてね、個人的な自分だけのものをやりたいなあと思って。あとは健康のためだね。
大野 じゃ、その頃は海なんか関係なかったの?
千葉 そうだね、大学の頃はクラブも厳しかったから、なかなか海にもいけなかったしね。でも精神的な面とかは養ってきたと思うけどね。
大野 そういうのが大会なんかでプレッシャーがかかった時にいい?
千葉 サーフィンは短いでしょ。短い時間の中でどれだけ自分を出せるかっていうのがある。難しいと思うね。
大野 いまだにそれは感じる?
千葉 感じるね。
大野 どうして、波乗りが上手くなったと思う?
千葉 うまいかな(笑)? そうね、早くハワイとかを知ったからじゃないかな。うまく言えないね。
大野 プラス精神力かな。
大野 それでハワイへ渡ったのはいつごろなの?
千葉 21の時。その頃ノースショアでうまかったのがドロップアウトの小川さんとか抱井もクィーンズで会ったけど、全然同じだね、今と。
大野 それから湘南に3年間いたあいだにも、サーフィンに関して勉強になることはあった?
千葉 そうだね。すごいちっちゃい波でみんなメチャクチャうまかったね。びっくりしたね(笑)。
大野 こっち(日本)に戻ってくるまでにちっちゃい波はあまりやらなかったでしょう?
千葉 乗ってないね、あんまり。ひざや腰波はあまりやらなかった。
大野 ハワイはどこでやってたの?
千葉 夏はアラモアナ、冬はノースショア。ノースショアと言うでもそんなでかいところは。まあいろんな所は入ったけど、ワイメアだけは入ったことがなかった。日本に帰ってきてやっとひざとか腰の波を練習し始めたという感じかな。大変だったね。
大野 でもその頃はシングルフィンでしょ。日本に帰ってきてから?ツインフィンに乗り始めたのは?
千葉 そう。でもツインフィンに乗ったのはごく最近。
大野 なんでツインフィンをさけてたの?
千葉 べつにさけてはなかったけど、シングルフィンのサーフィンが好きだったからかな。
大野 でツインフィンに乗ったのは何かきっかけはあったの?
千葉 みんなほとんどツインフィンに乗ってるでしょ、コンテストは。それで試して見たいと。あとはシェイプのため。
大野 ああ、そうか、いろいろと乗ってみないとやっていけない。でツインに乗ってみてどう?
千葉 今乗っているのはツインでシングルみたいなターンもできるし、フロントでね。バックサイドはあんまり好きじゃないけど。
大野 ふつうはホームグラウンドはどこなの?
千葉 今はほとんど伊勢かな。たまに四国。
大野 初めてやったのはどこ?
千葉 四国の生見。
大野 ハワイに行ったきっかけは?
千葉 最初は、先輩たちがハワイに行かないかって、ちらっと行ったわけ。もちろんサーフボードは持って行かなかったけど、いい所だなあと思って。で今度は1ヶ月くらいいようかなあと思ってたんだけど、結局1年以上いたね(笑)。
大野 むこうではもう波乗りだけで?
千葉 波乗りばかりやってた。アルバイトして。
大野 湘南にいるとき、いづれは関西へ帰るつもりでいたの?
千葉 そんなことはないね。でもやっぱり友達も多いし人間味もあるし。
大野 今は1日をどういうふうに過ごしてるの?
千葉 まあとりあえず、シェイプルームもあるから。朝起きて風があったら……
ウインドサーフィンして。帰ってきてシェイプして、いろんな所に電話して、波があったら1時間くらい伊勢に行ったりして。
大野 満足できる生活になってきたの?
千葉 まだ満足してないね。
大野 もっと波乗りしたい? シェイプをしたい?
千葉 波乗りしたいね。
大野 さっきも話したけど、関西はこっちより遅れてると言ったけど、むしろこっちから見ると、情報が(関西の方が)早いとも思うんだけどね。
千葉 どうかなあ。
大野 トライフィンはまだ乗ったことはないの?
千葉 1回乗った。大きい波で、けっこうよよかったけどね。今年の冬、ハワイには持って行ったけどね。
大野 公平が目指している波乗りはどういう波乗り?
千葉 やっぱりオーソドックスな波乗りだね。ラインのきれいなスムーズな波乗り。チューブに入ったり、そんなサーフィンがいいね。あとサーファーでもある程度大きい波に乗らないと残らないでしょ。小さい波ばっかりでは。
大野 うん。一番自信のある波の大きさってどのくらいなの?
千葉 4〜6(フィート)くらいかな。
大野 やっぱり日本のでかい波でもビビったりしないってのはハワイでの経験があるからかな?
千葉 そうだね。毎年ハワイに行ってるから、たすかってるんじゃないかな。だから俺がハワイにいくのは自分の為もあるけど、エネルギーを養うためもあるし。まあ、今まで毎年ハワイに行けたのもラッキーだったけどね。


 

“サーフィンというのは進行形。
サーフィンができなくなるまでサーフィンしたやつが
本物のサーファーだと思う”

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大野 世界中を見回してみて好きなサーファーっている?
千葉 そうやな、ジェリー(ロペス)は好き。今でもいい友達だし。今年の冬の話だけど、パイプラインに入ってて波待ちしてたら「コウヘイ、コウヘイ」って呼ぶんだ。だれだろうなって思ったらジェリーだった。久しぶりだなって感じで。そのあとで家に行ってサーフボード見せてもらったり。あとはピーター・マッケイブも好き。
大野 2人ともグーフィーだね。
千葉 デェイン(ケアロハ)もやさしいね。
大野 今、自分で削っている板っていうのはどんな板なの?
千葉 ツインフィン。自分では5フィートぐらいまでハンドリングできると思う。ただしレギュラーの波だけどね。
大野 ツインフィンのバックサイドってどんなふうにいやなの?
千葉 下から上に上がった時の切り返しが好きじゃないね。特に波がでかいとまわりすぎるみたい。
大野 ほれすぎてるところを上げちゃうとあんまりよくないんだよね。
千葉 ツインフィンは先輩だからな。ガンガン、当てにいっても平気かな?
大野 上がり始めたらさ、一番楽なのは、サイモン・アンダーソンのスーッと出すのがあるでしょ。あんまりすごい角度で上げていくのはよくないみたいね。トライフィンはそのスピードを持続してドロップインしていけるみたいだけど。
大野 この間もちょっと聞いたんだけど、ガールフレンドは?
千葉 ガールフレンド? いますよ。そうだね。今は今のガールフレンドといる時が一番楽しいね。だから今も早く帰りたいね(笑)。全日本もあやふやだし。
大野 こういう風にはっきりしない大会はいやだね。
千葉 うん。いやだね。9月だったら9月って決めてほしいね。この辺(湘南)に住んでる人はすぐに来られるからいいよね。そういう面では少し関西の事を忘れすぎとちがうかなって思うね。
大野 うん。それはあるよね。関西がよくなっていくためにはどんなふうになればいいと思う?
千葉 そうね。スポンサーがもっとしっかりしてほしいね。そういう面では関東の方が面倒みがいいと思う。今の世界のスポーツは、日本のスポンサーが多いんじゃないかな。テニスやゴルフなんか、日本のスポンサーサイドでまわしているってあると思うね。サーフィンも行く行くはそうなるとは思うけどね。
大野 前に、大会にしばらく出てなかったでしょ? 何か落ち込む原因でもあったの?
千葉 いや、みんな、何ていうのかなあ、けんかごしでも勝ちたいんだなあと思って、それならやめとこかっていう感じでやめたんやけど(笑)。
大野 だんだん、試合も変わってきててさ、ああいう感じで行われていたのがやめようというシステムができてるんだよね。あの時代はみんな、オーストラリアのサーファーに影響を受けすぎてね。
千葉 まあ、試合なんだから仕方ないんだけど、それは自分の考えだったからね。なんかおもしろくないなあって思って。
大野 オーストラリアも行ったんだよね。
千葉 うん。クィーンズランドからシドニーまでずっと、波は良くなかったけど。
大野 で、どうだった?
千葉 サーフィンはやっぱり、みんなホットだったね。ドロップインもすごいね。
大野 どこが好きだった?
千葉 デュランバー。最高! 波はオーストラリアはいいね。日本向きだね。ハワイよりもチューブに入りやすい。あと、リトルアバロンもすごかったね。テイクオフしてあれだけ前に出た足に力を入れたところはなかったね。早く降りなきゃいけないと思って。
大野 試合なんか、楽な気持ちでやってるね。段々優しくなってきたのかな、性格も。
千葉 そうだね。
大野 健康には気を使ってる?
千葉 うん、気をつかってるね。いつまでも波乗りをやっていたいから。最近は彼女からヨガをならってるし。
大野 じゃあ、何となく今は充実してるんだね。
千葉 うん、今は楽しいね。
大野 これから大会に出ても、若い子供達から追いかけられる立場にいると思うわけ。どうやったら俺を追い抜けるかって若い子供達に一言。
千葉 そうだね。もっともっとサーフィンに関して苦労しなきゃダメだね。いろんな所に行って基本を身につけてうまくなってほしい。あと試合で俺に勝ったからって俺を追い越したわけじゃないよ、決して。サーフィンっていうのは進行形。サーフィンができなくなるまでサーフィンしたやつがサーファーだと思う。それが本物のサーファーだと思う。
大野 じゃあ、一生つづけるわけね。ちょっと年とると長い板に乗る人がいるけど、僕としては、それはそれで楽しみ方はあると思うけど、ギブ・アップしてるような気がするんだよね。もっとがんばってほしいね。公平は今年で30になるの? 30の仲間入りするんでしょ。そうすると、僕も31。山崎さんもいるわけ、善家さんもそうだし、青田もそう。30代これからも頑張らなきゃあね。
千葉 まだまだ俺も若いと思ってるし。自分自身、年をとっても、もっともっといいサーフィンをしたいと思うし。そのためには自分の健康管理もしていかなきゃいけないし、いい板も必要だし。
大野 最後になったけど“303”ってどういう意味なの?
千葉 その板に乗ると意味がわかるとでも言っときますか、ハハハ。
大野 今年のスケジュールは? ハワイは行くの?
千葉 うん、今年は自分の板を試してみたいと思ってる。これからはシェイプもうまくなりたいと思うし、若いやつらも育てたいし、楽しみだね。

 

©️Surfin’Life Magazine / Issue of Vol.3 No.9 1982
Interview by Kaoru Ohno

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